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「華緒梨(カオリ)さあ、それってもう2年くらい前の話なんでしょ? なのにいつまで忘れずにいるのよ」
目の前で淹れたての熱いコーヒーを猫舌でちびちびと舐めながら、ゆりは呆れたようにあたしを見た。
ゆりは、小学校以来の一番の友達だ。
中学と高校は別だったけど、大学では一緒。あたしのことなら、何でも知っている。
そんなゆりが眉をひそめて非難するのは、あたしのバッグの中にあるハンカチのことだった。
「忘れないでいようと思って頑張ってるわけじゃないんだよ。でも、あんな親切な人なかなかいないから、それでっていうか……」
「顔、見てないんでしょ? 恋とも呼べないわよ、そんなの」
「恋って……だから、そんなんじゃないって……」
あたしは肩を竦めて笑った。
……立花先輩のことがあってから、あたし自身にそういう話は一度もない。
ゆりといつも一緒にいるから、普通に大学生がするような遊びにも参加はしている。
普通に誘われたりもするけど、遊びの中のそのままのノリで恋を始めてみよう……っていう感じがどうにも馴染めなくて、相手が本気じゃないことを判っているから、するすると逃げてばかりだ。
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