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「なんとお呼びしたらよろしいでしょうか」
「あっ・・・えっと、名前は
萌子っていうんですけど」
「じゃあ、萌子・・・ちゃん、でいいかな」
「は、はい!」
優しく名前を呼んだ彼に、
私はときめきを隠せずにいた
「今日はどこかご希望の場所が?」
「い、いえ・・・特に」
「じゃあ俺の、お勧めのカフェでお茶でもしようか。
初めてだし、もっと萌子ちゃんのこと、よく知りたいから」
ああぁ、ダメだ。
職業柄、こんなセリフは何百人に言っているに違いないのに、
それでも胸がときめいてしまう。
(ダメだ。騙されるな。
この人はホストと同じ。
きっと、お金のために優しく
してくるに違いない)
「お荷物、お持ちしますよ」
蓮さんはそう言うと、私が手に下げていたカバンをひょいと持って、
私の左手を握った。
「!!」
「あっ・・・手、つないじゃ
まずかったかな?」
「や、そんなこと、ないです。
ちょっとびっくりしちゃって」
「そっか、それなら良かった。
じゃあ行こっか」
大きくて、骨ばった手。
その手の中で、小さな私の手はかすかに震えていた。
「・・・緊張してる?」
「いや、あの、はい・・・
すいません」
「・・・可愛いね」
―――神様、悪い男にときめかない方法を教えてください。
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