10人が本棚に入れています
本棚に追加
オレンジ色の暖かな灯火がケーキの上で歳の数だけ揺らめく。それを一気に吹き消すと、拍手で溢れる。この日ばかりは誰もが主役。
「今日、和仁(カズヒト)、誕生日だよね?」
はっと、思い出したように言ったのは、博美(ヒロミ)。なんの偶然か、博美と僕は同じ誕生日だ。最近、クラスが一緒になり、その事実を知った。クラスでは一番仲がいい女子だ。
「うん。博美も誕生日だよね?」
博美の問いかけに、返事を返す。
誕生日。僕は素直に喜ぶことができない。
「じゃぁ、私の方が先に言うね。誕生日おめで……」
僕は博美の口を手で塞いだ。突然、お祝いの言葉を遮られ口を抑えられた博美はきょとんとする。
「ごめん。まだ、お祝いの言葉は言わないで」
僕はそっと博美の口から手を離すと呟いた。
「なんで?お互いまだ、誕生日が祝えないなんて、歳じゃないじゃん?」
博美が無邪気な笑顔で言う。
「誕生日、うれしい?」
僕は博美に問いかけた。
「ん?そりゃ、うれしいよ。みんなにおめでとうって言われて、なんてったって、プレゼントもらえるじゃん?」
博美が答える。僕は博美の言葉を考える。
「そっか。そうだよね」
ぜんぜん、博美の答えは間違えじゃないし、クラスメート十人に聞いたら、十人がそう答えると思う。きっと、僕もみんなと同じように生まれて、みんなと同じ環境で育っていたら、きっと、同じようにおめでとうと言われて、何の疑問もなくプレゼントを貰って、喜んでいたと思う。でも、それが本当に誕生日ってモノなのかな?
最初のコメントを投稿しよう!