森の魔法陣

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「暑い、だるい、勉強したくねぇ……」 「レオ、そう言ってもあと一週間だぞ」  前の席でぐだっとしているレオに、現実を教える。すると、大きくため息をついた。 「ダン……お前頭いいだろ……」 「いや、普通だと思うぞ?」  なぜ俺が頭いいという結論にいたったのか謎だが、机に広げた参考書に目を落とす。 「地理は苦手だからフランに教わるんだけどな」 「へぇ、なんでフラン?」 「フラン、俺の使い魔になる前にも一回、仕えてた人がいるんだ」  そう言うと、レオは興味を持ったらしく、顔を上げてこっちを見た。 「……ってことは、その人亡くなってるのか?」 「うん……フランがまだ子供の時召喚契約でその人の使い魔になってから五十年くらい仕えてたみたいだよ。その人は旅人で色々なところにフランと旅をしたらしくて、地理には詳しいんだ」 「五十……って、フラン何歳なんだ?」 「七十年くらいって言ってたな」  その七十年のうち、俺が共に過ごしたのは九年だけなのだけど……。 「すごいな……ムーンウルフってどのくらい生きるんだ?」 「さぁ……魔物は寿命を迎える前に殺されちゃったり病気になっちゃったりするから、そういうのはあまりわからないんだよな……」 「そっか……でもフランすごいな。七十年のうち六十年くらい使い魔として生きてるってことだろ?」 「そうだな。何度かその人の話題になるけど、凄くいい人だったみたいだぞ」 「やきもち妬いたりしないのか?」 「うーん……でも、今は俺のことをちゃんと見てくれてるの知ってるから」  そう言うと、レオは苦笑いした。 「全く、お前らには何言っても無駄な気がするわ」  クスクス笑って無駄だよ、と答える。きっと、俺もやきもちは妬くんだろうけど、それは俺とフランを隔てるものにはならないだろうから。
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