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3人で並んで大きな通りに出たら。
「とりあえずさ。二人で家で待っててくれるか。俺買い物してから1時間くらいで戻るから」
家の鍵を颯君に渡した。
「――え?」
「なんだよルン。俺達どっかに付いてくんじゃねえのか?」
リーダーも何処かで食事するのかと思ってたみたいだけど。
「――今日の主旨はその名も、『俺の新作手料理を無理矢理食べさせる会』だ」
颯君は俺の気持を察したみたいで。俺の家の鍵を、鞄に仕舞った。
「なるほどね…」
「何だよ颯君!」
俺にも説明しろ!って。騒ぐリーダーを。
手を上げて止めたタクシーにまあまあ、と押し込みながら乗り込んだ颯君は。
「――じゃ。後で」
「ああ。後で」
俺も別のタクシーを拾って。
食材を買い込みに出かけた。
生ハム。卵。チーズ4種類。ベビーリーフ。フルーツトマト。ジャガイモ。強力粉。シナモン。無塩バター。ジョナゴールド。バケットと白ワインも買い込んだ。
頭の中で、家にある食材と、仕上がる料理を思い浮かべながら、次々専門店を渡り歩く。
予告どおりほぼ1時間くらいで買い物を終わらせて。
両手に荷物を抱えて家に戻った。
自分の家にインターホン鳴らして入るって珍しいよな。
とりあえず一回鳴らして待ったけど。
――応答が、無い。
「――?」
もう一度鳴らして待ったら。
暫くしてから。
バタバタと玄関に足音が近づいて。
『――い、今開けるから!!』
ドアの向こうで悲鳴のような颯君の声が聞こえた。
「――お…!お帰り…」
ドアの鍵を開けて、細く開いたドアから覗いた顔は。
頬がほんのり赤く上気して、
少し湿った髪で。何故か俺のTシャツ着てる颯君。
「ゴメンコノルン。シャワーとタオルとTシャツ…借りた」
「あ。ああ…。――別に、いいけど…」
あの、飛鳥井さん?何時もは皆無な色気が漂ってないですか?
「おうルン、遅えぞ」
そして何だか、リーダーは無駄に生き生きしてないですか?
たった1時間外しただけで――
「お前ら俺ん家で何した?」
颯君は小さい声で。
「な!?――何にも…してないよ?あ。荷物。持ってやるよ」
誤魔化すように食材の荷物を抱えて家の中に戻っていく颯君。
ま…無理矢理デートぶち壊した俺が悪いけどさ…。と苦笑いしながら家に入った。
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