58人が本棚に入れています
本棚に追加
すう、って意識を取り戻すみたいに目覚めた時。
颯ちゃんと向き合って、変わるはずだった朝は。
――なんだ。
いつもとちっとも変わらない。
――俺もしかして、大革命は起こせなかった?
すう、すう、って。
隣で寝てる颯ちゃんの素肌の肩は。まだ同じリズムでゆっくり上下してるから。
起こさないようにゆっくりベッドから降りて。裸足で爪先を立てて窓辺まで歩いた。
窓ガラスの向こう側。
あんなにキレイな青空なのに。俺のキモチは全然晴れてない。
むしろ土砂降りじゃないの?コレ…。
溜息をつきながら、
小さなブリキのジョウロを取り上げて、あいつらに水をあげようと思って。ベランダの窓を開けてプランターを覗き込んだら。
「あ…――やったぁ!!」
命のしるしを見つけて、思わず声が上がっちゃった。
『う…――』
背中越しに。
ベッドが軋んで、颯ちゃんが伸びをして声を出してるのが聞こえた。
しまった…。
颯ちゃんは起き出して、バスローブ引っ掛けて伸びをしながら俺の隣に立った。
「アイダちゃん。朝から元気だね…」
どうしたの?って。
あんな事沢山したのに。
驚くくらい普通に会話しちゃってるね俺達。
「――ほら、見てみて?」
颯ちゃんが覗いたベランダのプランターの中には。
小さな丸い二葉たちが、
『俺がオレが』って互いを押しのけるように生えてる。
「コレ何の芽なの?」
「ひまわりだよ?――俺ね。小学校のとき育てたの、途中で台風にやられちゃって。ちゃんと自分で咲かせたことなかったから」
リベンジして咲かせようと思ってるんだ。
そっか…。
「――アイダちゃんはやっぱり…『太陽の花』か」
颯ちゃんがくす、って笑って隣で呟く。
「え?」
「――何でもない。大きく咲くといいね」
それと。言い忘れてたけど。
「オハヨ」
ちゅ、なんて俺の唇にわざと音させながらキスをして。
「シャワー借りるね?」
また両手を上げてうーんって伸びをしながらペタペタ歩いてく颯ちゃんの後姿見てたら。
こんな事がこれから日常になるってことそのものが、大革命なんだって。
俺は何となく。解った気がした。
最初のコメントを投稿しよう!