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再び春めく色 ~赤~
一体何度挑んだのかもう覚えてられないくらい、颯ちゃんは何度も俺を受け入れてくれた。
今は。
すう、すう、と。安らかな寝息が目の前で幾度も繰り返されてる。
ささやかでいいんだ。
こんな毎日が、繰り返してくれればいいって願う。
「――に…のぉ?」
突然、颯ちゃんの瞳が開いて、俺のこと探すみたいに呼びかけてくるから。
「颯ちゃん」
俺は此処だよって、颯ちゃんの頬に手を当てたら。
その手を握って嬉しそうに頷いて。
また夢の世界に戻って行った。
「――っ…」
こんなにまで求めてくれて、震えるほどの喜びを俺に教えてくれる。
「ありがとう、颯ちゃん」
俺の方こそ貴方のいない毎日なんてもう、想像なんかするのも怖い。
俺の渇いてた砂漠を豊かなオアシスで満たしてくれるのは。
これからも颯ちゃんだけだよ?って。
俺は繋いでた颯ちゃんの手を両手で包み込んで。
誓いのキスを残した。
(了)
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