the Love Bug(ルン×壱成)

2/15
前へ
/129ページ
次へ
あの日の事故。俺はマネージャーから聞いて知った。 アイツが忙しいのは解ってたから。 慌ててかけたケータイが繋がったとき。 『ニノ!大丈夫か…?』 なんて聞く方が間違ってるってことも解ってたけど。 俺にはそれしか言葉が見つからなかったんだ。 ニノはただひとこと。 『ゴメン…』 ――たった一言で電話を切られた。 多分、誰とも話したくなかったんだと思うけれど。 突然俺とニノの間に、見えない壁ができたのかと思った。 何もしてやれない自分が、もどかしい。    だから最近は。 『負けるな!君はきっと上手くいく』 ってCMでいつも言ってるアイツに、 「お前こそ負けんなよ」 って独り言返してる。 楽屋でたまたま流れてたそのCMにまた話しかけてるのを、 しまった…。 颯君に聞かれてた。 新聞読んでた颯君は、びっくりしたように顔を上げたけど。 「コノルン――そんなトコで練習してないで。直接言ってあげればいいのに」 ちょっと困ったように首を傾げて、眉を寄せて笑うから。 豆柴みたい。 「――直ぐ電話したのに。俺言い損ねたんだよ…」 俺は珍しく素直に白状した。 お?って、耳をぴくっとさせた豆柴颯君は、丁寧に新聞を畳んでテーブルの隅に重ねてから、 俺と話すためなのか背筋を伸ばして。右手を俺に向かって差し出してきた。 「さ。座って座って」 お兄さんに話してみなさい?って言葉が聞こえてきそうな椅子の勧め方をする。 こういうところ、真面目だよな。  仕方なく促されるまま座った俺は。 豆柴兄さんに最近思うことを素直に話してみた。
/129ページ

最初のコメントを投稿しよう!

58人が本棚に入れています
本棚に追加