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楽屋の机の上に顎を預けながら座ってた俺は。
カタタタタタタ、って猫背でソファに座って熱心に3DS弄ってたニノに。
「なあニノ…――アイダさん、最近凄く変じゃないか?」
って。何となく疑問をぶつけてみる。
珍しく画面見たままじゃなくて、一旦指先の動きを止めてコッチを向いて。
怪訝な顔をされた。
「今更言ってんですかエル。アイダさんが変なのは、最初からわかりきってる事じゃないですか」
今年に入ってから。ニノは何故か俺のコトアルファベットで呼び始めたけど。
「――オマエその呼び方さ、全然浸透して無いからいい加減やめろよ」
って苦笑いする。
ニノはまた3DSの画面に視線を戻して、超絶技巧で指先を動かし始めた。
「皆に浸透なんかしなくていいんですよ別に。だって俺だけがそう呼んで。ルン君が返事してくれたら、それって俺達特別なんだ、って実感できるじゃないですか…なぁんてね。――何俺に告らせてるんですかルン君」
ゲームに集中してるはずなのに。どうしてこんなにスラスラと話が出来るんだろうと、蔑ろにされてるっていうより、感心するしかない。
「オマエホントにハートが強いなあ」
「俺のハートはガラス細工ですよ!」
繊細だからエルも大事にしてくださいよ、なんていうけど。
「ガラスはガラスでも、オマエのは強化ガラス…防弾ガラスじゃねえか」
ちょっとやそっと叩いたって壊れやしねえだろ。
「うまーい!座布団10枚!豪華商品差し上げます!…ってね。――んで?アイダさんがどう変だって言うんですか」
「何だニノ、話きいてくれんのか?」
「ゲームしながらでよければ…」
「ふざけんな」
「んもー。じゃあ、壱ちゃんの貴重なゲーム時間割く代わりに、今夜の晩御飯一回」
「ほんとにふざけんな」
「じゃあ俺の持ってる耳寄りアイダ情報…エルには教えてあーげなーい」
「――は?別に要らねえぞ」
何となく気になる。ってくらいだったのに。ニノにあんな思わせぶりに言われたら、今度は『何があるんだ』って構えるしかなくて。
正直戸惑うけれど。そんな素振りをコイツに見せたらどうなるかと思ったら、怖い。
ああだけど。
何かあるのなら確かめたい。
「――ええ?いいの?」
じゃあ、しょうがないよね…って、この話が流れそうになった時。
ノックの後すぐガチャリ、とドアを開いて入ってきたのは。
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