the Love Bug(ルン×壱成)

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―― 一人で居ると。    傍に居ないルン君のことを自然と思い出すから。 撮影所では時間を見つけては出かけてみたり。 わざと忙しくしたり。  とにかく忘れる努力をしてみた。 ――でも。  あの日からもう一週間以上経ったのに。  お互い忙しいから、そんなに何時も一緒に居た訳じゃないけれど。 繋いでない左手の違和感が消えないように感じるのはどうしてだろう。 それに、少し見上げれば何時でも見られたはずのあの笑顔が無い。 一緒に家に帰るときに、ルン君の肩越しに見えてた景色。 俺の視界のファインダーにルン君が居ないだけで。違う場所みたい。 ――驚いた。  重い、って思われたくなかったから、会いたくても無理矢理予定をあわせるようなことはしなかったし、  ――寂しいことにも慣れていかなきゃダメだって思ってたのに。 『それって、恋愛してるって、言わないね』 アイダさんが呆れたみたいに俺に言うのに、反論できるだけの材料が俺にはなかった。 『――俺は、ルン君のことを尊重してるんだ』 辛うじて苦しい言い訳をするけど。 『ワガママ言うの我慢したり、寂しいのをちゃんと伝えないって。お互い一人でいいって言ってるみたい』 アイダさん曰く。 いいトコばっかり見せるのは、まだ他人な証拠で。 ダメなところとか、弱いところを見せあって初めて、お互いを受け入れて上げられる関係になれるんだって。 『アイダさんって、時々びっくりするくらいモノの本質を衝くことを言うよね』 『だからさ。――ルン君が我慢して、言いたくても言えないワガママ。ちゃあんと聞いてあげて』  ニノはちょっとだけどお兄ちゃんでしょ? なんて言うから。 『解った。――アイダさん。俺よりちょっとだけ御兄ちゃんなだけあるね』 『たまにはそれらしいことしないとね』 ニノも頑張んないで、素直になるんだよ、って。 お兄ちゃんは俺を送り出してくれた。
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