the Love Bug(ルン×壱成)

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「――あ!汚ぇぞそー君!」 居間から歓声。 二人は天然なのか空気読めないのか、俺がニノとCMしてたあのレースゲームを始めた。 「勝負に勝てれば手段は何でもいいのっ!」 アイテム使ってリーダーをコースアウトさせた颯君は。珍しく出来るゲームを見つけて嬉しそう。 「ね、サトリさん、もう一回やろ!」 「え~!俺負けてばっかで詰まんねぇよ!」 普通リベンジって負けた方が要求するんじゃねえの?って。 ラブソファで交わされる二人の会話。 ホント仲良さそうで。 ――正直羨ましい。  じゃがいものニョッキが踊ってる鍋の中の湯を見つめながら。 どうして俺こんな事してんだ…って。少し空しくなる。  別の鍋のベシャメルソースも程よくとろみが付いたから。 茹で上げたニョッキの上にソースをかけて、ゴルゴンゾーラ、パルミジャーノ、モッツァレラ、マスカルポーネを乗せてから、オーブンへイン。 ベビーリーフとオリーブと生ハムとかたゆでたまご、硬めに茹でたじゃがいもを混ぜてサラダ1品。 「おーい二人とも、座れ~」 サラダをテーブルに置いて。 ワインクーラーに入れて冷やしておいた白ワインを取り出したら。 「ご飯ご飯!」 「腹減ったよもぉー」 「悪い。飲んで待ってて」 コルクを抜いて北条ワインの白を二人のグラスに注ぐ。 「かんぱーい」 グラスが触れ合う音を背中に聞きながらキッチンへ戻る。 ボウル2つ重ねて急速に冷やしてたビシソワーズ。生クリームを少し落として。最後にパセリのみじん切りを散らす。   「――すっげぇ…これ家で作れるんだ」 賽の目切りのジャガイモ、玉葱、パプリカ、茄子、トマト、ピーマンをフライパンで炒めて、卵液を流しいれて蓋をして中火で8分。 大体回りが固まったら裏返せば。あとは弱火で3分。 皿に載せたら、フライパンそのままの大きさの、スパニッシュオムレツ。 トマトソースを添えて。 二人の前でホールケーキをカットするように取り分けてたら。 オマエ一体何処に向かってんだ、ってリーダーに言われて。 「わっかんねえ」 って、応えたら。颯君が。 「――ゴメンな。ほんとはこれ全部。ニノに食べさせたかったんだよな?」 「あ?…そっか――そういうコトか」 しんみりしちゃったじゃねえか。って口を尖らせるリーダー。 「オマエコレ。当日にニノんち行って作れ」 どれもうめえぞ!って言ってくれるけど。 それが出来ないんだよ。
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