58人が本棚に入れています
本棚に追加
その日の収録終わり、帰ろうとしてた俺の前を塞ぐように立ちはだかって、
「ニノ。今日この後は?」
って聞いてくるリーダーに。
「――おじさんが此処で今邪魔してくれてなかったら、俺直ぐ帰れるんですけど」
「――よし。無いんだな。予定」
満足げに笑うのはいいけど、リーダー貴方ね。
人の話を聞かないにも程があるよ?
「明日朝早いから、食事なら颯ちゃんと行って」
突然俺に名前を呼ばれた颯ちゃんはびくっ、って肩を震わせて振り返った。
「――な…なに?」
出たよ脅える豆柴。そんな顔するから皆苛めたくなるんだよ。
「――そっか、じゃあメシついでに颯君も一緒に行くぞ」
「俺帰るって言ってんだろ…」「何処に行くの?」
何を言い出すのか余りに突然で。二人がかりでリーダーに抗議するけど。
「――ニノん家にゲーム借りに行こうと思ったけど。持って帰るのめんどうだから。颯君も一緒に行ってこないだのカートのリベンジマッチすんぞ」
行くぞ!って俺達を追い立てる。
「俺いいって言ってないのに…」
今日は16日。明らかにこれ明日の伏線だろうと思ってたのに。
ちょっと期待したのがバカバカしいくらいに、フツーに3人で食事して、フツーに俺ん家でリーダーと颯君は、俺が暫く触ってない専用ハンドルリモコンを握り締めて、二人で『リベンジマッチ』を始めた。
呆れるくらいお二人とも自由なことで。
でも。こんなに気兼ねなくいつもどおり接してくれるから、俺は救われてるんだ、って思う。
「――俺風呂入って寝るけど…帰っても泊まっても、どっちでもいいよ。鍵貸しておくからさ」
って言ったら。
「――そうか?」
リーダーがちょっと見上げるからつられて俺も見上げた時計は。
11時20分。
「じゃ。そろそろ帰ろうか…」
ホントにバースデー合わせじゃなかったんだ。って少し心が軋んだような気がした時。
――ピンポーン、て。
玄関のインターホンが鳴った。
「――あ。来た来たデリバリー!ニノ出て!」
嬉しそうに言うリーダー。
「あんたこんな時間に何頼んだんですか!って。帰るなら頼むなよ!」
って文句言いながら、仕方なく玄関のドアを開けたら。
「あ…」
「――こんばんわ。真夜中のデザート」
お持ちしました。
って。
ルン君が、白い箱を大事そうに両手に二つ抱えて、立ってた。
最初のコメントを投稿しよう!