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酷いのはアイダちゃんだよ。
俺の本気と冗談の区別も解らないんだから。
「――ね。アイダちゃん。誰かの次に好きだよ?って言われたら、どうする?」
酔っているのを抜きにしても、こんなこと聞くのはおかしいって解ってるけど。
真意を測りたいアイダちゃんはつぶらな瞳でじっと俺を捕らえてきて。瞬きもせずに見つめてくる。
「解んない…でも。今日の颯ちゃん、何か変…」
答えの直ぐ出ない質問ばっかりするだもん。
「ゴメン。俺、ホントにどうかしてる…」
もしあの日が、晴れた夏の日だったら。
きっと俺は、向日葵の写真を撮りに行こうって、アイダちゃんを誘ってたはずなんだ。
『――俺、アイダちゃんの事好き?』
自分の気持ちに投げかけてきた疑問符は。
『俺はアイダちゃんが好き!』
多分感嘆符のほうがしっくりくる。
でも。
「――俺。アイダちゃんのこと好きなのに。多分コノルンのことも気になってる」
っていうのも本心。
アイダちゃんはさっき俺が耳元で囁いた本気の言葉よりも、多分真面目に聞いてくれた。
「颯ちゃんて。正直な人だね」
羨ましいよ。って言うけれど。
「俺は――ルン君のことが好きだけど。その次に颯ちゃんが好きだ、なんて。言えない」
さらりとアイダちゃんの本音が聞こえた。
「思う人には思われず。かぁ…」
でも俺は。コノルンみたいに諦めて好きな人の背中を見つめ続けるだけなんてできないから。
パラダイムシフトを起こしたいんだ。
「俺――今は。コノルンの次でも、いいよ?」
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