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「アイダちゃんの家。久しぶりだ」
昔は何の気なしに遊びに来てたのに。何時もアイダちゃんが纏ってるフレグランスの残る部屋は、息をするだけで、誘われてるみたいで眩暈がしそう。
落ち着けないままソファに座って見回してたら。
「はい。颯ちゃん」
アイダちゃんは缶ビールを俺に差し出してから、
大きな溜息を吐きながら、隣にバウンドする勢いで座ってきた。
思惑を含んでる俺は、全然飲むつもりなんてなかったのに。
プルトップを良い音させて開けたアイダちゃんは。俺の隣で缶が逆さまに立つ勢いで飲み干していく。
急にドキドキしてきた俺は、何を話したらいいか判らなくて。
「アイダちゃん」
「ぅん?」
缶を飲み干して俺に視線を寄越した瞬間、濡れてる唇に、音を立てて口付けた。
「んっ…」
俺に不意打ちみたいなキスされたアイダちゃんの頬が、ほんのり染まる。
「颯ちゃん!びっくりするでしょ?」
いきなりキスしないでなんて言いながら。
俺のこと咎めるみたいに睨んでくるから。
「じゃ。キスしていい?」
「あのね?」
俺は別に許可を取れって言ってるんじゃなくてね?って、
まだ口の中で言葉をもごもごさせてる頬を、両手で包み込む。
「アイダちゃん」
名前を呼びながら顔を寄せたら、アイダちゃんはぎゅっと目を瞑る。
コレっていいってことだよね?って、
ふっくらして柔らかい唇に、俺の唇を押し当てて。
まだ、身体を硬くしてるアイダちゃんの背中に手を回す。
「ん!」
食いしばってる歯を舌で強引に割って、アイダちゃんの中に這入りこんだら。
生々しくお互いの舌が触れあう、今までのキスとは比べものにならない快感に、一気に身体が熱くなった。
アイダちゃんの舌が、奥で逃げ惑って蠢くから、夢中で追いかけて。
きつく舌を吸い上げたら、ふるふると手の中で背中が震えた。
俺は、抱き締めてる腕に力を込めて、息をさせないように追い込んでく。
「は…っ」
抗議するみたいに俺の下唇を甘く噛んで、アイダちゃんの顔が離れる。
俺も上がった息を整えながら、顔を見つめた。
「可愛い」
人差し指の先で、キスの間に唇の端から流れた唾液を掬う。
「恥ずかしいなあもう!止めてよ」
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