陸上部の初恋

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「佐弓先輩…」 佐弓先輩は意外と背が小さかった。僕の鼻辺りしかない。 寒さと緊張で歯がカチカチ鳴る。 拳を握り締め、僕は言い放った。 「佐弓先輩。僕、10月辺りからずっと佐弓先輩を見てました。最初は『走っている佐弓先輩』を見て、元気を貰った感覚でした。 でも今は『佐弓先輩そのもの』を見ていて、好きになりました」 「……」 佐弓先輩は俯いている。 北風が粉雪を運びつつ、僕の間を突き抜ける。 冷たい空気が流れた。 「あの…初恋なんで、良く解らなくて…何て言ったらいいか」 僕が言葉を言い終える前に佐弓先輩は冷たい風を切って喋った。 「ごめんなさい!私…葉山さんの事…」 フラれた。それだけなら何倍も良かった。 「葉山さんの事…怖くて、私、何度も吐いたわ。 だってずっと見てるんだもん…怖かったの」 僕の体から力が抜けるのが解った。 彼女は逃げるように屋上から去っていった。
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