1章

8/26
前へ
/32ページ
次へ
見慣れた街が過ぎ去りながら次第にオレンジの光は弱くなり、繭子が降りるバス停に着く頃には辺りは徐々に暗くなっていた。 バスをおりてその大きなくたびれた背中を見送って、繭子は歩き出した。 秋の涼しい風が頬を切る。 空港で買ったお土産の紙袋がカサカサ音を立てる。 秋の涼しい風が頬を切る。 何度もなんども歩いた道をまた歩く。 あの頃はどんな気持ちでここを歩いていたんだっけ。 きっと今以上に下ばっかり見て歩いていた気がする。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加