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今から10年前の、ある夏の日の夜。
1人の真面目そうな高校生が、塾帰りに人気(ひとけ)のない路地を歩いていると、
見るからに不良と思われる数人の少年達に、周りを遠巻きに取り囲まれた。
その高校生はぎくりとして立ち止った。
自信無さげにその場にたたずむ様子は、不良達からすれば恰好のカモに思えた。
「ちょっといいかな。」
リーダー格の少年が、高校生の正面に陣取って言った。
「俺達、暇なんだよね。遊ぶ金、置いて行ってくんないかなぁ。あるだけでいいんだけど。」
その高校生は、リーダー格の少年からの問いかけに対し動かなかった。
いや、動けなかった。
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