二人

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フェンスを跨ぎ、屋上の端に来た。まるで空に浮いてる様で……、清々しくも穢れきった風が頬に触れる。 (少し前に行けば、俺はもう死ねる。楽になれるんだ) 涙が溢れる様に流れた。切なくて哀しくて、「感情」という概念に入りきらない何かが心の奥底から出てくる。 (死ぬ!俺は死ぬ!怖がるな!楽になれる!死ななきゃ!) 目をギュッと瞑り、拳を強く握る。冷や汗が額から流れる。足はガクガクと震えている。 だが、足は落ちるギリギリの所まで進んでいた。 (行く!死ぬ!) 信念を貫く様に、決心した。 俺は力を抜く。 「なぁ、これロビンソンだろ?良い曲だよな~」 力を抜いていた体が一気に強張る。後ろを向くと、俺のイヤホンを着けた男が立っていた。 「スピッツはさ…、自分のやりたい事を先にやられて挫折したんだよ。でもさ、諦めずに自分だけの歌作って、これほどの人気を作ったんだ。だからさ…」 「ふざけるなっ!!」 まるで人事の様に言う彼に、声を張り上げる。彼は体をビクつかせ、イヤホンをゆっくり取った。
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