二人

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「何なんだよお前は!いきなり出てきて、人の物勝手に着けて!」 フェンス越しに怒りをぶつける。……いや、怒りなど無い。ただ誰かに何かをぶつけたかっただけなんだ。 「何やお前っ!面白い奴だな~!これ、捨てたんやろ?だったら俺の物や~」 イヤホンを人差し指で振り回す。にやついた顔も気に喰わない。 「五月蝿いな!それは俺のだ!返せっ!」 フェンスを飛び越えて、奴の元に走る。奴は一歩も引かずに、来るのを待っていた。 「おう。本当は死にたく無かったんやろ?全く……何かに原因擦り付けて止めんの止めろや。ほれ、これは返す。だから死ぬなら死にな」 奴は俺に音楽プレーヤーを差し出した。奴の顔をチラリと見る。綺麗な顔立ちをしていて、髪は茶髪の短髪。そして……輝いた目だった。……まるで自分と正反対の、希望に溢れた目だった。 「ふざけるなお前!普通、人が死のうとしてたら止めるだろ!」 俺は奴の手から、音楽プレーヤーを乱暴に受け取る。それでも真剣な顔は、一つも動かなかった。 「死ぬんやろ?中途半端に止めんなや」 心に深く突き刺さる言葉。 奴は……とんでもない奴だ。俺はそう確信した。
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