二人

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「ああ、死んでやるよ!こんな腐った世界、生きてても何も意味が無い!」 俺は激しく物を言い、堂々とフェンスに。死にに向かった。 「ほう~。そうやな。腐りきった世の中やわ。ま、堂々とした姿勢は良かったな。ほな、また地獄で会いましょな~」 奴は満面の笑みを浮かべている。残酷な奴だ。最低最悪な奴だ。とんでもない奴だと思ったのは、とんでもない冷酷人間だからだ! 俺の目からは涙が溢れる。でも不思議と、奴に対しての憎しみは無く、自分の情けなさに涙が溢れていた。 「お、地獄行く前に一つ聞かせてや!お前の名、なんちゅう名前なん?」 こんな場面でありながら、平然とした顔で名前を聞いてくる。だけど……不思議と声が出た。 「……空乃海人」 間の開いた瞬間。俺は何故、こんな場所で、こんな場面で見知らぬ奴に名を教えてるのか分からない。 「空に海ね~。じゃあブルー君!君は涙を流せた記念に、俺と一緒にバンドを組む権利を与えようでは無いか!」 「……はぁ!?」 ブルー君って何だよ。涙を流せた記念って何だよ。バンドって何だよ。 「お前、綺麗な目、してんじゃん!涙で洗われたんかな?俺は信頼した奴にしか声を掛けん。それにお前となら最高のバンドが組める。どや、組まないか?」 奴は手を差しのべる。奴の手までは遠いが、体温も距離も近く感じられた。俺は無意識の内に、フェンスを越え、奴の元に歩く。 「お前、名前は?」 俺の問いに、嬉しそうに奴は笑った。 「草辺瑞生!またの名を、使い回しのトイレットペーパーだ!」 これが奴、草辺瑞生との出会いだった。
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