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「ここから見る景色は最高だよな~……。特に夕方!陽の落ちる姿なんてロマンチックや!!」
俺、空乃海人と、草辺瑞生は、何も無い屋上に腰を休め、青い空を眺めていた。
「……あのさ、あんまり状況が掴めないんだけど」
俺は楽しそうに語る瑞生に、呟く様に話す。
「何言ってんだ。お前が俺と握手した瞬間、俺達はバンドのメンバーだ!」
当たり前の様に話す瑞生に、俺は呆れ、ため息をつく。
「ま、そんな事より昼飯や!今から給食取ってくるから、お前さんはここで待ってなさい!」
そう言うと、そそくさと屋上を出ていく。俺は何か言うつもりは無かったが、俺がまた自殺しようと考えるとは思わなかったのだろうか。……奴に限ってあり得ないか。
話は変わるが、この中学校は少し変わっている。この地区は都会の方にしては自然が多いのだが、学校周辺は特に自然だらけ。先生の殆どが田舎からの上京者で、マイペース。その為、生徒が居なくても「自然と遊んでるんだべ」と言って、何の関心も持たないのだ。とにかく緩い学校として知られている。
(ま、だから屋上で休んで居られるんだけどさ……)
今の時期は春。一年生だ。そう、今年で俺は中学二年生になる。そんな時に死のうとした等、今になって馬鹿馬鹿しく思える。
「ただいま~!」
二つの給食を持って来た瑞生は、俺の隣に座る。
「箸、どっちが良い?金属製か割り箸。今なら割り箸にすれば、つまようじが付いてきます!」
二つ差し出して来た瑞生だったが、迷わず右手の割り箸を取る。
「へへっ」
「瑞生」と名前が刻まれた金属製の箸を、どうやったら取れるんだ。
俺はため息をついたが、気にせず給食を食べ始めた。
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