春の桜と君の瞳

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ガチャ 『行ってきます』 なんて言わない。ただ無言で家のドアを開けて、ドアを閉めるだけ。 ドアノブから手を放し空を見上げると、瞳に揺れ映るのは黒く青い空。 「…寒」 春といっても夜はまだ冷える。 私は首に掛かったカメラを左右に揺らしながらパーカーのポケットに手を突っ込み、ゆっくりと足を進めた。 今日から高校生だなんて…実感が湧かない。 だって、新しい友達が増えるわけでもないし… 恋愛だって今は興味ない。 「…ここでいいかな」 首に掛かる重みを、両手で解く。 カシャ、 カシャ、 なんども響くシャッター音と、風によってつくられる木々のこすれあう音。 人1人いない夜の道で、桜の花びらに包まれる。
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