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プロローグ
僕は、松下優一郎。僕が人生でし損ったのは、大学の推薦入試を、越後大学医学部じゃなくて、慶長大学理工学部応用化学科にすればよかったことだ。明義大学を卒業したことも、最近になって誇りに持てるようになったけど、慶長にしていたら違う人生になっていたと思うことがたびたびある。越後大学を中退した姫宮優一郎君ともたぶん違う形で出会っていたんじゃないかな?
自室の机の上に、時空を超えるカプセルがあった。まだ飲んだことはないが、ヨーロッパの科学者が、松下の実家の民宿に泊まった時に、分けてもらったものだ。その科学者は、酒を飲みながらこう言った。
「これはタイムマシンカプセルです。あの時、ああすればよかったなと思ったときに水と一緒に飲みなさい。すると、眠くなるから寝てください。元に戻るカプセルは、今開発中ですが、いずれできるでしょう。元に戻せるカプセルができたときには、また持って、泊りに来ますよ。その時は違う人生がどうなっていたか、優一郎さんの冒険の人生を聞かせてください。」
松下は、カプセルを持って、しばらく考え、決意した。
「これを飲んでみよう。」
松下は、しばらくしたら眠くなったので、ベッドで寝た。
気が付くと、僕は大学のキャンパスにいた。校門を探すと慶長大学じゃないか。あのカプセルを飲んだら、本当に時空を超えたんだ。ポケットを探ると、定期券入れがあった。出してみると、日吉から元住吉までの定期券と、運転免許証があり、住所は川崎市のアパートになっていた。
(ここに帰ればいいんだな…。しかし、腹が減ったな。)腹が減っては戦ができぬ。
学生食堂で大好きなイカ墨スパゲッティを食べていたら、横に誰かが味噌ラーメンを置いて座った。
「松下さん。」
横を見ると、姫宮優一郎がにやっと笑っていた。
「ひめ?」
「そうさ。おれも必死に勉強して、慶長ボーイになったんでよろしくね。」
「今日から、おれたちは一年生?」
「そうだよ。クラスも同じだし。」
姫宮は慶長大学応用化学科に一般入試で苦労して入り、偶然にも同じ学年、同じクラスになったのだった。
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