幻想入りの日

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深く、身体の底から鈍痛が上がってくる感覚。 身体がトラックの運動を受けて、ゆっくり宙に浮く。 右腕の骨が一瞬軋んだとおもえば、ゴキン!!と良い音を立てて折れた。 (地面に叩きつけられたら、肉が飛び散りそうだなぁ) 脚が道路から完全に離れ、身体に浮遊感が加わる。 もちろん吹き飛ぶ先もコンクリートの道路である。 ゆっくり進む世界に音が戻り始める。 感覚が今の状態にシフトしたのだ。 (トラックのクラクション五月蝿いな…) わずかに顔をしかめ、トラックの方を見ると一人の少女が歩道に向かって倒れ込むのが見える。 僕がトラックの前から歩道に突き飛ばした少女だ。 (また言われるのかな…。正義のヒーロー見たいに) たまたま通った大通りに、信号無視して突っ込んできたトラック。 その前には一人の少女が理解が追いつかない顔でトラックを見て…。 そして僕が間に割って入り、今に至る。 どうだこのやっちゃった感は。 抱え込んで避ければよかったとか、後の祭だよね。 (ん…) ふと驚きと悲鳴が響く歩道に、不思議な少女が立っていた。 日傘をさし、帽子から長い髪を流し、扇子で顔を隠す少女。 その少女がこちらを見て、微かに笑った気がした。 ―――暗転。
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