幻想入りの日

5/7
前へ
/109ページ
次へ
僕は慌てて口を噤んだ。 音は徐々に大きくなり、僕は気付く。 (僕のさっきの叫びで呼び寄せてしまったのか…?) そうだとすれば僕はとんでもない失敗を犯したのかも知れない。 ここが現実かどうかはまだわかりかねるが、自分が感じている痛感や聴覚は間違いなく本物だ。 ならばここで狼なり野犬に襲われた場合なすすべなく命を…。 「そんなの絶対嫌だ…!」 僕は身体を起こそうとして。 次の瞬間には地面に倒れ込んでいた。 (身体が…、動かない…!?) 事故の衝撃と出血でついに身体の限界が来たのだ。 手足の感覚は消え、視界は薄れ始める。 「僕はまだ……しに…た…」 僕の記憶はここで途切れる。    †       † 「確かこの辺りだったはず…」 竹林を全力疾走していた藤原 妹紅は足を止めた。 いつも通り竹林の見回りをしていた所、人間の叫び声が聞こえ、飛んできた次第である。 妹紅に人間を助ける義理は無いが、竹林でのトラブルは極力避けたい。 「輝夜のヤロー…。また何か悪い事をした訳じゃなかろうな」 グチグチと小言を漏らしながら辺りを調べて見る。 「ん……?」 ふと竹林の地面が一部えぐられた痕跡を発見する。 まるで何かを引きずった様な跡。
/109ページ

最初のコメントを投稿しよう!

206人が本棚に入れています
本棚に追加