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僕は慌てて口を噤んだ。
音は徐々に大きくなり、僕は気付く。
(僕のさっきの叫びで呼び寄せてしまったのか…?)
そうだとすれば僕はとんでもない失敗を犯したのかも知れない。
ここが現実かどうかはまだわかりかねるが、自分が感じている痛感や聴覚は間違いなく本物だ。
ならばここで狼なり野犬に襲われた場合なすすべなく命を…。
「そんなの絶対嫌だ…!」
僕は身体を起こそうとして。
次の瞬間には地面に倒れ込んでいた。
(身体が…、動かない…!?)
事故の衝撃と出血でついに身体の限界が来たのだ。
手足の感覚は消え、視界は薄れ始める。
「僕はまだ……しに…た…」
僕の記憶はここで途切れる。
† †
「確かこの辺りだったはず…」
竹林を全力疾走していた藤原 妹紅は足を止めた。
いつも通り竹林の見回りをしていた所、人間の叫び声が聞こえ、飛んできた次第である。
妹紅に人間を助ける義理は無いが、竹林でのトラブルは極力避けたい。
「輝夜のヤロー…。また何か悪い事をした訳じゃなかろうな」
グチグチと小言を漏らしながら辺りを調べて見る。
「ん……?」
ふと竹林の地面が一部えぐられた痕跡を発見する。
まるで何かを引きずった様な跡。
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