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「琉央、」
昔、母さんと一緒に来たこの海。
「琉央飛び込んで海面にあがってくるあの景色が母さんは好きなの。あの色も。琉央ももう少し大きくなったら見られるかもね」
17歳になった今。
母さんと同じ景色を見ることができる。
「ぶはっ」
海から上がってきた彼女―木崎琉央(きさき るお)は、
岸にあがるとびしょ濡れのTシャツとズボンをできるだけ絞っている。
そんな時だったチャイムが聞こえたのは。
「あっ、ヤバ」
チャイムは近くの桜海高校の朝のHRを伝えるものだった。
つまり、そこに通う琉央は遅刻。
琉央は、海岸に無造作に置いてある自分の荷物を持つと学校への道を走り出した。
「・・・」
自分が落としたブレスレットのことに気がつかないまま。
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