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学園都市。
東京西部を完全再開発して作られた一大教育機関であり、総面積が東京の三分の一に相当する巨大都市。
総人口約230万人、その八割が学生のこの都市は特殊な“時間割り-カリキュラム-”を組み込むことで学生達に超能力を人工的に開発していた。
普段なら人通りも多く、活気づいているこの街だが現在の時刻は午後11時を回っていて多くの学区は眠りについている。
しかし、その中でいまだに照明を消さずに働き続けている建物がいくつかあった。
第七学区にある病院もその内のひとつである。
この病院内にある隔離病棟につい先ほど手術を終えたばかりの患者が運び込まれた。
黒髪の、まだ10歳程度の少年だ。
頭に電極を何個もつけられ、体には包帯、左腕からは点滴用のチューブがのびている。
少年は一人のカエル顔の医者と数人の看護士に運ばれて“特別隔離室”と書かれている、一人分の病室にしては少し大きすぎる部屋に入っていった。
看護婦達の手によって病室のベッドに移され、ベッドの周りに設置されている医療機器につながれていく。
その病室と廊下を隔てる壁にはお互いの状況を確認できるように大きな窓が設置されていて、そこから二つの人影がこちらを覗いているのが確認できた。
一人は無精髭を生やした中年のヨレヨレのスーツを着た男性、もう一人は白衣を着てメガネをかけた白髪混じりの初老の男性だ。
中年男性の方は顔が青白く額からは汗をしたたらせ、やけに不安そうな顔をしている。
初老の男性の方は呆れたような顔をして体の前で腕を組み、窓越しに少年の病室を眺めていた。
「せ、せんせい・・・羽加川-ハカガワ-先生!!ぼ、ぼ、僕は一体ど、どうしたら良いんでしょうか!!?」
青い顔をした中年男性はプルプル震え、頭を抱えながら初老の男性に言った。
羽加川と呼ばれた初老の男性は病室から顔を背け、声のした方へ顔を向ける。
「瀬能君、まずは何故こんなことが起こったのかを説明したまえ。私も外から学園都市に戻ってきたばかりだ、今行われている研究や実験のことは分かりかねる」
羽加川は混乱している瀬能を諭すようにゆっくり言った。
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