フィクション1

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本番が近づくに連れ、レッスンも厳しくなったが、僕には余裕だった。 へへっ。僕、運動神経だけは良いからね。 共に練習したり過ごしていく内に、メンバーとの溝が無くなっていく…そんな感じがしたんだ。 これが、一体感ってやつか… だから本番前日に、僕は緊張している皆を励ましたんだ。 「ようやく本番だね。僕の初デビューなんだから、もっともっとやる気出していこうよ!」 そう言った途端、皆の心が一つになるのを感じたんだ。 メンバーの緊張感が殺気に変わり、僕が別の意味で緊張する羽目になったからね。 僕の勘違いだったみたいだね。てへっ。 そして、いよいよ本番。 今思えばリハーサル中も、何かと白い目で見られていた気がするよ お約束の様に、司会者の人が 「今日は、新メンバーが初登場というこで、どんな子か楽しみですね。」 と言っているのが聞こえた。 アイツ、何言ってんだ? リハーサルで会ったじゃんか? メンバーに同意を求めたが、本番直前を前に凄まじい緊張感だった為に無視された。 今思うと、あれは殺気だったのかもしれないな。 「それでは、A〇Bの皆さんお願いします。」 司会者の声を合図に、音楽が流れてくる。 そこへ、煙が吹き出す演出と共に、僕達が登場した。 ヤバイ… 今の僕…… 物凄く、カッコいい!! 歌って踊りながら、僕は叫びたいほどに心が高揚したんだ。 うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ! 心の中で吠えたつもりだったのに、歌の途中で叫んでたみたいなんだよね。 僕も一本取られたよ。 その時の他メンバーの顔ときたら、汚物を見るような目で見てたよ。 それなのに、まるでアドリブだったかのように歌も踊りも続けていたのは、さすがにプロだねと思ったよ。 勿論、僕も中断せずに最後まで歌ったよ? 流石、僕。
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