フィクション1

5/5
前へ
/5ページ
次へ
そして歌も終わり、出演者の座る場所へと向かったんだ。 これから、色々と話を聞かれるんだよね。 特に僕なんか、初登場だからね。 そう思うと、また僕の心は最高潮まで高揚したんだ。 ここでも、声に出して吠えてたみたいなんだよね。 スタジオにいる客からも、白い目で見られている気がしたな。 冷たい空気の中、そのまま司会者が話しかけてくる。 「え…と…、デビューした子って男の方ですよね?何かの企画ですか?」 いきなり僕にきたぁー ヤバイ、今日は僕が主役で決まりだコレ。 悪いね皆。今日は、僕の一人舞台だよ。 またもや、声に出して吠えてたみたいで他のメンバーがビクッと肩を震わせて警戒していたんだ。 「はい。僕、太郎です。」 「何かのギャグなんですよね?」 ピキーン 何と失礼なっ! 人の存在を、まさかのギャグ呼ばわり。 とても許せる事ではない。 嗚呼、殺人衝動ってこういう時に起こるのかな? 僕は、カツラを横にいたメンバーに渡すと、 「後は、頼むよ。」 そう言い残すと、司会者に向かって飛びかかって行ったんだ。 ぼくは、背中に隠し持っていたタウンページを取り出すと、司会者を殴りつけたんだ。 そして、司会者が動かなくなるまで何度も何度もタウンページの角で殴ったよ。 その時、何を考えていたかなんて覚えていないが多分… 今日の晩飯は、カレーだったら良いなと考えていたことだろう。 返り血で、タウンページのタ行の開きが悪くなったのは、またのお話。 こうして僕は、刑務所にいる。 最後にカツラを取ったからなのか、普通に男刑務所だったのが陰謀としてしか思えなかった。 今僕は、刑務所内での運動をする場所の真ん中で座っいる。 囚人の皆って、何故か僕に冷たいんだ。 どけ!とか邪魔だ!とか言って、僕をのけ者にするんだよ? そんな毎日の中、もう冬も近づき、風が冷たくなってくると、僕は物思いに更けるんだ。 勿論、どっかの石像と同じポーズだよ? 僕は、最近よく思うんだ。 何がいけなかったのだろう? と…… 『完』
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加