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胸元にない、ペンダント。
あたしは空の手をぎゅっと握りしめ、真っ白な頭を落ち付けようと必死で深呼吸をした。
布団の中でもがいてみても、足はピクリとも動かない。爪先が軽く曲げられているだろうか、それすらも曖昧なほどに足は言うことを聞かなかった。
まだそんなに時間は経っていないのに、ドタドタと足音が近寄ってくる。…藤堂さんの、焦る声も。
「左之さん!まだ朝!朝だから…!」
「誠花ぁ!」
思い切り障子を開く左之助と、その後ろでズベン!と転ぶ藤堂さん。その光景に、あたしの焦りは吹き飛んでしまった。
「たてっ、立たねえって本当か!」
「え、えぇ。」
がっと身体を抱き起こされ、左之助の顔が間近にくる。
この組のやつは、顔を近づけるのが好きなのかしら…!
左之助はあたしを膝に載せようとしてきたけれど、往復ビンタを食らわせて阻止した。
「気安く触らないで!」
「おぶぅ…。」
「さっ左之さん…。」
左之助はあたしを布団に戻し、一度も動かせていない足を見た。
「…足、なのか?」
「ねえどういう事?あたしの足のこと、なんか知ってんの?またあんたのせい?」
左之助を布団から睨むと、下を向いたり、藤堂さんの方を見たり、手を撫でたりしたあと、がばっと土下座をしてきた。
「すまねぇ!!本当に、本当にすまねぇ!!」
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