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そう言えば……お父さんの靴があったかもしれない。こんな昼間から帰ってきたのかな?
『ただいま』
「ごめんね。お散歩中に」
『いいよ』
やはりお父さんが帰っていた。
いつも「窮屈だ!」と言って直ぐに脱ぐスーツを着たままリビングのソファーに座って険しい表情をしている。
こんな早くに帰ってきて、こんな表情を見せられたら緊張してきた。
絶対に良い話では無い。良いニュースなら異様なテンションで私が座るのを待たずに喋り始める。
でも、今日は違う……。
「急だが、父さんアメリカ支社の支社長に就任された」
『凄いじゃん!』
「ありがとう。それで、家族で行く事になった」
『えっ?』
「お爺様の命令だ」
お爺様の命令……たまに両親から聞く「お爺様の命令」という言葉。
何度も気になったけれど、聴いてはならないという雰囲気で聞かずに受け入れていた。
我が家みたいに普通の家とは違う。
お爺様の家はドラマで見るような豪邸に住んでいる。家には居ないお手伝いさんもいる。
お正月になれば、顔も知らない親戚が大名行列の様にお爺様の所へ挨拶に来る。
大体この普通の家があの豪邸と繋がっていること事態も疑問だよ。
この際、聞いても良いだろうか。
『お父さん、お爺様ってどんな人なの?』
「姫にも言う時だな」
私が思っている以上に凄い人なのかもしれない。
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