第1章 スタート

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 そう言えば……お父さんの靴があったかもしれない。こんな昼間から帰ってきたのかな? 『ただいま』 「ごめんね。お散歩中に」 『いいよ』  やはりお父さんが帰っていた。  いつも「窮屈だ!」と言って直ぐに脱ぐスーツを着たままリビングのソファーに座って険しい表情をしている。  こんな早くに帰ってきて、こんな表情を見せられたら緊張してきた。  絶対に良い話では無い。良いニュースなら異様なテンションで私が座るのを待たずに喋り始める。  でも、今日は違う……。 「急だが、父さんアメリカ支社の支社長に就任された」 『凄いじゃん!』 「ありがとう。それで、家族で行く事になった」 『えっ?』 「お爺様の命令だ」  お爺様の命令……たまに両親から聞く「お爺様の命令」という言葉。  何度も気になったけれど、聴いてはならないという雰囲気で聞かずに受け入れていた。  我が家みたいに普通の家とは違う。  お爺様の家はドラマで見るような豪邸に住んでいる。家には居ないお手伝いさんもいる。  お正月になれば、顔も知らない親戚が大名行列の様にお爺様の所へ挨拶に来る。  大体この普通の家があの豪邸と繋がっていること事態も疑問だよ。  この際、聞いても良いだろうか。 『お父さん、お爺様ってどんな人なの?』 「姫にも言う時だな」  私が思っている以上に凄い人なのかもしれない。
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