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そんなエナの朝は早い。
きっちり五時に起床し、うがい洗顔をし、朝食を済ませ、コーヒーと共に朝刊の新聞に目を通す。
コーヒーは角砂糖二個にミルクを入れた甘ーいヤツである。
その新聞のニュース欄にとある記事が記載されていた。
『勾留中の犯人。ついに自供。』
犯人の名はクロダ・ドラグル。
今から約一週間前にとある老人と、とある大男が本庁に保護を求めてきた。
命を狙われているから助けてやってくれ、と。
(私はその時、巡回中だったっけな。)
と、エナは思いを馳せているが、実はこの事件。
エナが担当を任されたのだった。
本庁にいた同僚は最初の頃はまったく信じていなかったが、老人の脅え方が尋常ではないということで、保護をしたのだと言う。
その時、老人と同行していた大男は自らを『生かし屋』と称し、姿をくらませたらしい。
もっぱらエナは質の悪いイタズラか被害妄想癖がある人だと思っていたのだが、捜査を続けていると、なんと本当に容疑者を見付けたのだった。
それはと言うと、状況証拠、アリバイ、目撃証言がピッタリと被害者の言う証言と合致したのだった。
(被害者が大男に一言礼を言いたいって言って、わざわざ探したっけ。)
だが、見付からなかった。
『生かし屋』と名乗る大男を。
ネット、人脈をフルに使っても見付からず、事件だけは解決したので、それは個人でお捜しくださいと言うことになった。
もっとも、同僚と被害者が言うように大男だったならば街中であれば直ぐに見付かるだろうが。
エナはチラッとテレビ欄を確認すると、ファサっと新聞を閉じた。
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