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そのせいだろうか。
目の前にいる大男が自ら貼った貼り紙に、悪戦苦闘しているのに割り入ったのは。
自分の些末な罪滅ぼし。
エナは性格故に責任感も強い。
「任せなさい。あなたの大きな手じゃ取れないでしょ?」
「むう……面目無い。」
突如大男と掲示板の間に入ったことにより、大男はビクッとしたが、事情を話すとおずおずと引き下がり非常に申し訳なさそうにこちらを見ている。
エナはまるで二つの壁に挟まれたようだったと極自然に思った。
そして、極自然に大男が貼った貼り紙の内容が目に入る。
「『生かし屋』……?」
エナはそのワードに思わず剥がしに掛かっていた手をピタッと止めた。
つい最近見た聞いたワードだ。
どこで見たのだろうか?
「あっ……。」
そうだ。
一週間前から時折耳にしていたではないか。
訊いた人はまちまちだが、老人、同僚、ネット、民間人から確かに見た聞いたワードだ。
『生かし屋』
老人はクロダ・ドラグルに殺されそうになった刹那、この『生かし屋』と名乗る者に助けられたと言う。
名も名乗らずに職業を名乗って姿をくらました大男。
思わず大男の方に振り返る。
老人の証言はこうだ。
二メートルくらいの身長にピチピチの黒スーツを着た大男。
首輪のように大きなネクタイを着けていて、癖の強い髪の毛。
まさに一致。
エナは捜索を止めた次の日に、大男を見付けたのだった。
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