祝、開店

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◆ ◆ ◆ 首都クレタの中心部付近はたとえ早朝であったとしても交通が途絶えることはない。 それほどまでに出入りが激しく、求められているのがわかる。 レルバはただいま車に乗り、揺られていた。 しかも、その車はレルバの車ではない。 というより、レルバに似合う車が無いのだ。 それは語らずとも、彼を一目見ればわかるだろう。 レルバは先ほど注意された警官──エナ・ケアルの車の後部座席に半ば押し込められるように乗車していた。 もちろん、シートベルトはしているが、正しい位置に着けているとは言いがたい。 レルバは内心溜め息をつく。 事の経緯はこうだ。 エナに老人がレルバを捜しているということを訊いて、一度警視庁にまで来てほしいと言われたのだが、レルバは最初は断った。 何故なら、それはレルバの“生かした者からは報酬以外は貰わない”という経営方針に反すると思ったからだ。 だが、エナも引かない。 エナは、ならば事件について聞きたいことがあるから来てくれと言われてしまったのだ。 こればっかりは断る理由も見付からなく、レルバはこの中古の車に押し込められる様に乗り込んだ。 幸先が悪い。 そうレルバは思っていた。
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