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首都『クレタ』の郊外。
まだ早朝五の刻だというのに、一人の大男がとある雑居ビル一階のシャッターを開けていた。
ガラガラと開けられたシャッターの音を聞いた人はきっとベッドの中で不機嫌そうに唸っているに違いない。
だが、このところどころ赤茶色に錆びたシャッターを開けた大男は、嫌に上機嫌だった。
大男の名は『レルバ・ガングレリ・バーレイグ』
レルバは二メートルくらいに届く勢いで、見る者に圧迫感を与えるに違いない。
だが、ただ大きいだけではない。
その胸板は岩盤のように厚く、しかし筋肉質の胸板は相当鍛えているのが見てわかる。
同様に大木の丸太のような両腕は屈強な戦士を想像させる。
その顔は見る者に恐怖心を持たせるような厳つい強面で、その目付きは獲物を見付けたようなオオカミのようだ。
だが、その強面の大男は笑っていた。
否、ニヤけていた。
何も知らない人がみたら携帯電話を取り出して警察に通報するか、その場から直ぐ様逃げ出すだろう。
いや、なにも知らない人に限ったことではない。
事情を知っている人が見ても異様な光景にしか見えないだろう。
だが、レルバは笑わずにはいられなかったのだ。
レルバは丹念に磨いた扉の横に、成人男性の平均身長あたりに細長い木札を貼り付けた。
『生かし屋』と書かれた木札を。
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