祝、開店

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首都クレタには人が人を呼ぶ一種の『循環』があることを知っている人はそう少なくはないだろう。 同じように人が散歩をするところには、いつしか散歩コースが出来る。 ここクレタの商業地帯の外側にはランニングコースが設けられている。 もちろん、ここを利用する者は沢山いる。 年代は10代後半から70代までまちまちだ。 男女の隔たりもなく使われるランニングコースはしばしばデートコースにも使われることがあるという。 レルバには無縁のことだが。 「これで良し、と。」 そんな無縁のランニングコースに、レルバはしてやったり顔である一点を見詰めている。 その口端は弧を描き、見るからに満足をしている顔であった。 レルバの見詰める先には、都が管理している掲示板の一面。 掲示板と言えば、ほとんどの人が見上げるか同等の高さから閲覧するものだが、レルバからしてはどうしても見下ろすことになってしまうために屈まなくてはならなかった。 そして、そのレルバが見詰めている一面には、水道工事のお知らせや探し人の顔写真と特徴が記されている貼り紙から邪魔にならないように貼られているA4サイズの貼り紙が。 内容は、 『生かし屋。自分の命が狙われている、もしくは危険を感じているお方は是非下記のお電話まで。』 と、書かれている。 そうなのだ。 レルバは自身の事務所の宣伝をするために、わざわざ余り来ないランニングコースの掲示板まで来たのだ。 無論、レルバ自身もこれで客足が増えるなんて思ってはいなかった。 だが、レルバは思ったのだ。 自分から動かなければ仕事は見付からないと。 実際、初仕事もそうであった。 そんな貼り紙を貼り終えて帰ろうというレルバに、 「そこの、何をしている?」 声をかける人影が。
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