第三章

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目的地に向かうため、少し赤みがかった空を飛ぶ一機のヘリコプターの中から、悔しがる声と高笑いする声が聞こえた。 「ふははははっ!勝ち取ったりぃっ!」 青いゴーグルを付けた短髪の少年は持っていたトランプ二枚を無造作に椅子に叩きつけ、高笑いする。 ヘッドホン越しに聞こえる笑い声に、癖っ毛なのか所々跳ねている黒髪を結っている少年は、かなり驚いた様子だった。 少年の手には、一枚のジャックが握られている。 つまり彼はババ抜きに負けたのだ。 始めてから数分しか経っていないのに、驚異的な早さで負けた。 「またアガリかよっ!?」 黒髪を後ろで結っている少年――アレンは、青いゴーグルを付けた少年――レインと同様にジャックを叩き付けた。 さっきから五回勝負していたが、彼は全敗だった。さすがに一回は勝ってもおかしくないのに全て負け。 アレンが口をあんぐりと開けて呆けていると、レインが勝ち誇ったように鼻で嗤った。 「ふっ……甘いなアレン。おれは遊びにも本気なのだよ!」 ビシィッとアレンを指差し、レインは自信満々に他人を嘲笑うと、彼は頭を掻き毟り、大袈裟だろうと思うほど悔しがった。 しかし、負けず嫌いなアレンはプライドが許さないらしく、またトランプをし始めた。 負けず嫌いにも程がある。 ――だけど、私の予想では多分アレンくんはまた負けると思うな。 本をめくり、彼女は思った。 何たってレインはザンリル一の遊びの達人で、勝てる人なんて、まずいない。 アレンの隣で、黒髪を肩で綺麗に揃えた少女――ミオは、騒ぐ二人とは反対に静かに本を読んでいた。 操縦士に、特にする事ないからゆっくりしてくれて構わないよと言われたので、お言葉に甘えて本を読んでいるのだ。
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