第三章

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――アレンくん、やっぱり黒が似合うよ。noir(ノアール)っていわれるだけあるよなぁ~。 顔を紅潮させ、そう思う。 ミオビジョンで、今のアレンは物凄く輝いて見えていた。笑顔は更に輝いていて、胸がトキメく。 心拍数がヤバい。 それに比例して、呼吸数も増大する。 もしかして、アレンは好きな子などいるのだろうか。 好みのタイプはどんな子なのだろう。 好きな食べ物は何だろう。 脳内で様々な疑問が渦巻く。 聞いてみたいが、もし自分に気があると気付かれた暁にはと思うと、無理だ。 心臓が脈打つのを感じながら、アレンを見る。 今度の彼は、絶望感と惨敗感たっぷりの顔でレインを見つめていた。 ミオはレインを流し目で見ると、恐ろしいくらいの満面の笑みで彼を見つめ返していた。 「悪いな、アレン。あっがり~」 どうやら、またレインが勝ったようだ。 嘲笑ってアレンに向かって、ドヤ顔をするレイン。 これで彼は連勝。 アレンは連敗。 六回中六回、アレンは負けてしまったらしい。 「ぐがぁ~っ!!」 アレンはトランプのジャックを床に叩き付け、本気で悔しがる。 彼のその姿もまた、ミオの乙女心をくすぐった。 またプライドが赦さないのか、今度は神経衰弱でレインに勝負を申し込んだ。 それよりこの狭いヘリの中で、どうやったら神経衰弱できるかが不思議でならない。 それでも、やはりミオはアレンは負けると確信していた。何回やっても、勝てはしない。 アレンもそれが解ってるとはずなのに勝負を挑むその向上心は、自分も見習いたいものだと感心する。 普段もここまで熱心であればいいものを。 そこまで考えてから、ミオは何を考えているのだろうとカァッと頬を淡く紅く染め、恥ずかしさのあまり本に顔を埋めた。 それぞれが有意義な時間を過ごしながら、任務遂行地である《バージ・タウン》に向かう。
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