第三章

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 † 下層部と中層部を繋ぐ、唯一の(ゲート)がある中間の街バージ・タウンが今回の任務遂行地だ。 ここは(ゲート)がある中層部の街で、下層部から中層部に食料や木材などが運ばれてくるため住んでいるのは業者が多い。 この街にはヘリポートがなく、俺らを乗せたヘリは街の近くにある広々とした野原に着陸した。 俺はヘリが完全に止まり、外が安全になったのを確認する。 そして、まるで遠足を心待ちにしていた子供のような無邪気な笑顔を浮かべながら、待ちきれずにいち早くドアを開けて外に出た。 続いてレイン、ミオの順にヘリから降りてくる。 心地良い微風が頬を撫で、気持ち良さから目を閉じてしばしの間風に身を委ねる。 「ここだな」 レインが、頭に付けていたゴーグルを首まで下ろして言った。俺は辺りを見回す。 都市化が進んだ中層部では数少ない自然豊かな所だ。 辺り一面は緑に覆われ、微風で若草が揺れており、よく人が通る所には草は生えずに地面が露出している。 街の入り口の前には、何台もの貨物車が並べられているのを最後に確認してから、ここがバージ・タウンで間違いないと確信した。 昔にも任務で来た事があり、その時もここに着陸したのを覚えていたのだ。 しかし――。 「門っ(ゲート)てどこだっけ?」 (ゲート)とは無縁の生活をしていた俺は、当たり前に位置までは知らなかった。 昔は近くに生息する薬草を探していたから、(ゲート)の位置まで把握していないのだ。 そんな俺の気持ちを察してくれたのだろうか、ミオはにっこりと微笑みを浮かべて教えてくれた。 「(ゲート)はここからN刻だよ。街を真っ直ぐ抜けたらすぐ着くから」
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