第三章

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N刻は、この世界では北という意味だ。 東はE刻、西はW刻、南はS刻、北西はNW刻というように俺らは呼んでいる。 正直、少しだけ解りにくい。 「ああ、そうだった。ごめんな、久し振りだったから解んなくてさ」 「大丈夫だ、アレン。……ここだけの話。おれも解んねえ」 レインが俺の肩に腕を回し、耳元でボソッと囁いた。 レインも知らないのかよと、ツッコむ前に囁きが聞こえてたらしいミオは、 「大丈夫じゃないでしょ!」 と、代わりに違う意味だがツッコんでくれた。 俺らは苦笑いながらヘリの中から武器を取り出し、装備する。 ミオはもうと頬を膨らませたが、すぐに真剣な顔付きになった。 「二人共、絶対……絶対に!門(ゲート)を壊しちゃいけないよ!」 彼女はクリス隊長達のように、絶対を必要以上に強調した。 ミオは真面目の中の真面目、超がつくド真面目だからこういう事にはアスリナぐらいに敏感だ。 クリス隊長もそれが解っているから俺らのブレーキ係として、今回の任務のメンバーに彼女を入れたのだろう。 そう言われた途端に、俺らの笑顔はたちまち引きつりだす。 サアッと顔から血が 引いて青白くなると、ぎこちない動きで彼女とは真逆の方向を見た。 そして、聞こえるか聞こえないかぐらいの蚊の鳴く声で呟いた。 「あ、ああ……」 「頑張るよ……」 「勿論だよ。頑張ってくれないとこっちが……」 「ん?」 「何でもない」 ミオの呟きが気になったが、これ以上訊くと再び怒りに触れる可能性があるから、俺は訊くのを止めた。 やはり、女子には気を遣わなければならない。
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