第三章

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アレンもこの状況に驚き、ぽつりと呟く。二人はうんうんと首を縦に振った。 一体何がこの魔獣達を引きつけているのか、ミオ達には理由が解らなかった。 こうしている間にも、魔獣達は次々と門の上から中層部に侵入してくる。 今はまだ街の周りに設置されている結界装置で守られているが、いつ破られるか解らない。 早急にこの魔獣達を討伐しないと危険だ。ミオは折り畳み式の弓を上下に一回振る。 弓は一瞬にして組み立てられた。 「これは早く討伐しないといけないね。……頑張ろう!二人共!」 少し後ろでしゃがみ隠れている二人を振り返り、ミオは言った。 どうやら二人はとっくに準備万端だったらしく、背中に背負った長剣を鞘から抜き取り、既に右手で握っていた。 アレンとレインはそれぞれ無邪気で不敵な笑みを浮かべて、天に拳を突き上げた。 「おー!」 「行くぜっ!」 そんな元気な二人を少し頼もしく感じたが、クリス隊長が言っていたように今から二人を褒めると張り切りすぎて何をしでかすか判らない。 彼女は敢えて、「二人がいると心強いよ!」と言わずに、にっこり笑ってみせただけだった。 アレンも白い歯を見せると、いきなり鞄から黒い物体を一つ取り出した。 表面がゴツゴツとしており、取っ手のような場所にはピンが刺さってあるそれは、アレンが任務にいつも持ち歩いている手榴弾であった。 彼は魔獣が群がる門(ゲート)を見ると、手榴弾のピンを外す。何をするのだろうと思った瞬間に門へと放り投げた。 「先手必勝ということで」 笑顔のまま固まるミオに向かって、手をV字にピースするアレン。 後ろでは、凄まじい爆音が鳴り響き、爆風のせいで砂が舞った。何がどうなってるかすら解らなくなってしまった。 レインはやっと出番が来たというように剣の柄を強く握り、地面を力一杯蹴って土煙の中に入っていく。アレンもその後に続く。 直後、魔獣の唸り声や剣戟の音などが響き渡る。無謀にも突っ込んでいった二人の後ろには付かずに、急いで周りを確認した。 今の手榴弾の衝撃で、門に傷がついてないかを確認しているのだ。 傷は、ない。 良かった、壊れてないと心から安堵する。
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