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矢は見事に魔獣の体を貫いた。
咄嗟に胸が痛み、顔を背ける。
一秒も経たないうちに、再び魔獣を見る。
しかし、明らかに致命傷を負ったはずの魔獣は足を止めるどころか更にスピードを増して、戦っているアレンに向かっていく。
「アレンくん!右から来るよ!!」
矢を放つよりも叫んだ方が早いと判断した彼女は、即座にアレンに叫んだ。
ミオの叫びにハッと右を見たアレンは、すぐさまトンファーを構え、攻撃を避けて魔獣を叩く。
魔獣は気絶したのか、そのまま地面に倒れる。
「あっぶねえ……っ。サンキュー、ミオ!」
危険を知らせてくれた彼女に礼を言い、アレンは後ろに飛び退いて後ろで戦っていたレインと背中合わせの状態になった。
レインの荒い息遣いが、背中越しに聞こえてくる。
相当疲れているようだ。
――……確かに、この数は少しキツいな……。
アレンは同様に息を切らしながら思った。
本当に訳が分からない。
ここにいる魔獣達は種類もバラバラで、本来は群れを成すはずのない魔獣までいて不可思議だ。
とても集団で襲っているようには見えない。
だが、確実に意図的に集団で行動している。
目的が同じか、あるいは――。
そう考えを巡らせていると、後ろからくくくっと喉を鳴らして笑うレインの声が聞こえた。
驚いて、アレンは思わず彼を見る。
レインの顔はこの状況に似つかわしくない、楽しそうな笑顔を作っていた。
まるで新しい玩具を買ってもらって、喜ぶ子供のような無邪気な笑顔。
「アレン君ったら……ハァハァ……ちょっと息が上がってるんじゃない?」
肩で息をしながらレイン。
アレンはこの状況でも笑顔のままのレインに半ば呆れ、半ば感心し、笑った。
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