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――ドサッ。
目を固く瞑ったミオに聞こえてきたのは、魔獣が倒れた音。しかも、随分と近い。
彼女はゆっくり目を開け、後方を確認する。
後ろで倒れていたのは、ミオを襲おうとしていた魔獣数匹だった。
そこでようやっと、アレンは自分に向かって投げたのではなく、後ろにいた魔獣に投げたのだと気付いた。
魔獣は、ピクピクとまだ動いている。
どうやらアレンのクナイの巧みなコントロールで、急所を外し、動きだけを封じたらしい。
不覚だ。大失態。
戦闘の最中に考え事をして魔獣に攻撃を許すなどあってはならない事なのに。
「あ、ありがとう……」
ミオは慌てながらも、恥ずかしさと後悔を混ぜた声でアレンに礼を言った。
だが、彼はもうそこにいなかった。
また戦場に参戦したのだろうと思い、ミオも戻ろうとする。
ふと、門(ゲート)の状態が気になり、戻る前に確認だけでもしようかと見る。
そして、そこにいる人物を見て唖然とした。
「何してるの!?」
門の分厚いコンクリートで出来た壁を一生懸命よじ登る、アレンがいたのだ。
予想外の行動にミオはたまらずツッコんだ。
彼女の声に「おぉ!?」と仰天し、門から滑り落ちかける。
「えっと、俺は門の後ろに行くからここは任せた!」
「……えっ、ちょっ……アレンくん!?」
何とか体勢を立て直し、自分を唖然と見ているミオに言い放ったアレンは片手で敬礼をした後、門を登っていった。
彼女はアレンを呼び戻そうと門に駆け寄るが、横から突然現れた魔獣に阻止される。
矢を魔獣に向かって撃っていく。
アレンの事は正直物凄く不安で追いかけたいが、信じて任せるしかない。
――頑張って、アレンくん。
ミオは門を離れ、レインと共に魔獣を倒していった。
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