第三章

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 † 門(ゲート)を越えれば、そこはすぐ下層部だ。 下層部は他の層に比べて自然豊かで、各層のどこよりも人口が多い。 だが、それに比例するように魔獣も多く、中層部や上層部にとってとても危険地帯だ。 ほんの少しだけだが、久し振りの生まれ故郷を前に忘れかけていた空虚感が全身を支配し、自然と体が強張りだした。 今は考えている暇はないので、俺はかぶりを振ってこの気持ちをどこかへと吹き飛ばす。 そして、魔獣が侵入して来たであろう森が見渡せる門の天辺で、仁王立ちのまま見下ろした。 門の下を見て、どう飛び降りるかを考える。 先程説明したが、この門は全長約二十メートル。 つまりは高さは二十メートル。 飛び降りれば、そりゃあ勿論――。 『怖ぇーっ!!』 ――グシャ、みたいな事になるのは馬鹿な俺でも容易に想像ができ……って、誰が馬鹿だ。誰が! まあそれは置いといてだ。散々考えた末に出た答えは鉤付き縄を門に引っかけ、そのまま飛び降りるという事だった。 『思ったら即行動』がモットーの俺は、鉤付き縄を鞄から出すと、門に引っかけてバンジージャンプのように門から飛び降りる。 しかし、俺の縄の長さはどんなに頑張っても二メートルぐらいしかなく、後の十八メートルは自分で飛び降りなければならない。 そこまで考えてなかった俺。 空中でプラプラと揺れながら、どうしよっかなーと考える。 だが、「十五メートルなんて余裕だろ。足がビリッとなるだけだろ」と軽く考え、門から鉤を外した。 勿論十五メートルから飛び降りれば、足がビリッとだけじゃすまない訳で――。 「よっと……い゛っでっ!?ぎゃーっ!!」 当たり前に、着地は失敗に終わった。 ビリッとだけじゃ済まなく、足から頭の骨まで衝撃が電流の如く駆け巡り、地面で腰を押さえながら転げ回って痺れが収まるまで待った。
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