夢中

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ようやく寒さも和らぎ、厚手のコートを着ている人も減ってきた。 そろそろ春用のコートにするかな…… そんな事を考えながら、駅のホームでコートを脱いだが、右手に鞄、左手に傘を持っていたので、仕方なく小脇に抱えた。 窓が湿気で白く曇った満員電車に乗り込むと、額に汗が染み出てきた。 あと二十分もこの電車に乗らなきゃいけないかと思うと、ため息が出る。 最寄りの駅に着くと、いつものコンビニに寄る。夕飯を買うためだ。 弁当とビールをレジに持って行くと、いつもの店員が、必ず「温めますか?」と聞いてくる。 俺はいつもの通り「いや、結構です」と言った。 ちなみにコイツとは入社して以来だから、五年の付き合いとなる。 コンビニのマニュアルには、五年間温めるのを拒否していても、必ず聞くように徹底されているのだろうか? 最近マニュアル人間が増えている気がする。 部屋に戻った俺は、シャワーを浴び、ビールを飲みながら弁当を食べた。 いつもと変わらない日常。 当然、彼女なんてのもいない。大学時代の友達も年々疎遠になり、飲みに行くのも年一回くらいになった。 朝起きて、会社に行き、帰って弁当食って、寝る。 毎日のその繰り返しに、俺は心底飽き飽きしていた。
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