夢中

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俺の会社はデータ管理ソフトを作って売っている、どこにでも転がっている中小企業だ。 俺はそこでエンジニアとして働いてる。 本音をいえば、大企業でバリバリ働きたかったが、長引く不況で三流大学出の、何の取り柄もない俺を雇ってくれる会社などあるはずもなかった。 一方、彼女の方は年下だが、有名大学出で、大手銀行のよつば銀行に勤めるエリートだ。 うちの会社は、ビルの五階のフロアを借りているが、彼女が働く銀行の支店は同じビルの一階にある。 まさしく一目惚れだった…… 「佐藤さん。佐藤祐樹さん」 5番の受付の女性に名前を呼ばれ、その女性の顔を見た瞬間、体中に衝撃が走った。 受付に座る彼女を見た瞬間、俺の心臓は心音が聞こえるほど激しく鼓動し、視界には彼女だけしか入らなくなる。 彼女に「お客様。どうかなさいましたか?」 と聞かれるまで彼女をボーっと見つめていた。 その後のやり取りもあまり集中できず、彼女のネームプレートを見るだけで精一杯だった。 ネームプレートには椎名亜希子と書いてあり、何度もその文字を頭の中に刻み付ける。 きっと、変な客だなと思われたに違いない。 それからというもの、彼女のことを考えると何も手につかなくなってしまった。 今まで何度か恋愛はしてきたが、あそこまで夢中になることはなかった。
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