ハーデンベルギア(前編)

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……白線から落ちたら、今日の晩御飯は卵かけごはんね。 子供の頃によくやった1人遊びをしながら、今日もあの場所へ向かった。   「……あ」 自動ドアに書かれている開館時間を見ようとしたら、扉が左右に開いてしまった。 この道何十年のベテランという顔をした受付の女の人が迎えてくれる。 頭を下げられたので、私もペコ……と小さく頭を下げながら館内へ入った。 「お疲れ様でした」 カウンターの前を通り過ぎる時、小さく聞こえた声。 図書館員の人があがる時間か……、と私は時計を探す。 この時間に仕事が終わるってことは、朝から出勤してる人なんだろうから……。 結構朝早くに開くんだ、ここ。 自分の背丈の2倍はある棚と棚の間を抜けると、トイレの案内標識を見つける。 矢印に従ってトイレの前に着くと、その横に続く少し薄暗い廊下を覗いた。 そこを進んでやっと見えてくる、屋上へと続く階段。 屋上に人気がない原因は、この分かりにくさにあると思うんだ……。
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