冬虫

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支部の支部長には定期的に現状を報告しなくてはならない。 受像機からの暗号を解読できるのは、俺だけだからな。 もう少し、俺ぐらいとまではいかないだろうが優秀な人材が育たないだろうか。 明らかに人手不足だ。 やれやれ、支部長に提言してやるかな。 世話が焼ける。 表向きは単科の診療所。 ここが、支所だ。 支部の職員に挨拶し、手続きする。 周りの目があるから診察の受付に見せかけて。 本当は顔パスなんだけど。 しかし、しょうがない輩が多い。 挙動不審な奴が多い。 仕方ないか。 かわいそうな奴らと思って許してやろう。 俺がいるから、おまえら安穏と暮らしてられるんだ。感謝しろ。 ほどなくして、支部長室に案内された。 支部長に一通り報告する。 ついでに人材不足について指摘してやったら、秘書に体よく追い出された。 記録は一生懸命するから、職務に忠実なんだろうが、痛い所をつかれたからか、話を切り上げようとする態度は気に入らない。 …我慢してやる。 だが、覚えてろよ。 次回は報告に嘘を織り交ぜてお前に恥をかかせてやるからな。 何が、「食事はしっかりとりなさい」だ。 偽装を怠らずに、毎回支部からスーパーに寄っているだろうが。 サプリメントがあるから、本当は飯なんて無理くり詰め込んでいるだけだ。 腹なんか減っていないのに。
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