夏草

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四畳半のアパートの一室。 トランクスにランニングシャツの恰好をした青年は、小さなテレビの前であぐらをかいていた。 不精髭は、少しづつ伸びているようだがその持ち主はそれを放置している。 カーテンからは日光が洩れている。 蝉の鳴き声が盛んだ。 四畳半は湿度が高く、薄暗い。 ただでさえ、居るだけで気が滅入るような空間。 冴えない風貌の青年の髪は寝ぐせで形容し難い髪型。 青年の気力は、零に等しいほどに無気力だ。 小さなテレビは、ニュースを放送している。 無気力な青年は、無関心に眺める。 無関係な事柄ばかりだから。 画面上部に、地震速報が流れていたら、少しは興味を持ってテレビを観るだろうか。 実際は、それすらしそうにないと思える程に無気力な空気を、この青年は発しているのだから、救いようがない。
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