耳鳴り

第一章 デスペラード

スコット・アンダーソンは５月の心地よい木漏れ日を浴びながら、昼下がりの公園のベンチに座っていた。脇にはアメリカ中のタブロイド誌がうず高く積み上げられている。日曜日のウォーキングや犬の散歩を楽しむ人々は、いかめしい顔でGLOBEのゴシップ記事を睨みつけるスコットに好奇の視線を投げかけるが、決して関わり合いにはなりたくはないといった様子でそそくさと歩きさってしまう。
この光景は、スコットがこの仕事を始めてから毎週行われている恒例行事だ。彼はＳＰＷ財団超常現象部門の調査員。歴史の裏でジョースターの血筋を支え続けた影の組織のその一人。彼の情報源は、大々的に報じられるスキャンダルではなく、いかがわしい雑誌の広告ページなのである。彼の求める真実は、いつだってそこに隠れている。
そして今まさに、彼は奇妙な事件の入り口を見つけたところだった。

「不気味な男と、喋らない妻…ねえ。」

記事にはこう書いてあった。